
2020年度より、小学校でプログラミング教育が必修化されます。そして、中学校は2021年度から、高校は2022年度から順に実施される予定です。
プログラミングと聞くとHTMLなどを駆使したコーディングをイメージしがちですが、決してプログラマーの育成が教育の目的ではありません。
今回はプログラミング教育必修化について、小学校・中学校・高校別に内容をお伝えしていきます。プログラミングという言葉の響きだけで内容が勘違いされていることも多いため、しっかりと正確な情報を学んでいきましょう。
プログラミング教育必修化とは?小学校~高校別に内容を解説
2020年よりプログラミング教育が必修化されます。2020年に小学校、2021年に中学校、2022年に高校(学年進行)で、情報活用能力の育成・ICT活用を目的とした「新学習指導要領」が適用される仕組みです。
プログラミング教育必修化は、小学校から高校まで子どもの学習環境に合わせて高度なIT教育へとステップアップしていくことがポイントとなります。小学校ではプログラミングの考え方を取り入れるのみですが、高校になると実際にプログラミングを使った授業が導入されます。
それぞれ開始時期や学習目的、必修科目などが異なるため、小学校から順番にプログラミング教育必修化についてお伝えしていきます。
小学校のプログラミング教育必修化
小学校では、2020年度から新学習指導要領が全面実施されます。
ただし、プログラミング教育必修化とは言っても、小学校では実際にプログラミング専用の授業を実施することはありません。小学生の段階では、まずプログラミング的思考を学ぶことが第一の目的です。
新学習指導要領にて、プログラミング的思考を以下のように解説しています。
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
引用元:文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」
簡単に言えば、物事を順序立てて考え問題を解決していく力がプログラミング的思考です。
たとえば、算数の授業でプログラミング的思考を学ぶ場合、次のような実施事例が考えられます。
(出典:文部科学省「新学習指導要領のポイント」)
算数のほかにも、小学校では理科や音楽の授業、部活動への応用などでプログラミング的思考を学びます。
このように、小学校でプログラミング教育が行われる場合、プログラミング専用の科目が増えるわけではない(既存科目で付属的に実施)、必ずしもコンピュータを使って授業を実施するわけではないという点に注意してください。
小学校でプログラミング教育が必修化される目的は次の4点です。
- プログラミング的思考を養うため
- 情報社会におけるプログラムの重要性や大切さに気付くため
- コンピュータを活用してより良い社会を実現する態度を学ぶため
- 各強化の学習効果をより確実なものにするため
日本は世界に比べてIT人材が不足しています。小学校のうちからプログラミング的思考を身につけておくことで、ITに対する理解力が高まることが期待できるでしょう。プログラミング教育必修化が行われる背景には、こうした国内の社会的課題も影響しています。
中学校のプログラミング教育必修化
中学校では、2021年度から新学習指導要領が全面実施されます。
小学校で学んだプログラミング的思考を活かし、より実践的なプログラミング技術やセキュリティに対する学習が行われる予定です。技術・家庭科(技術分野)において「プログラムによる計測・制御」の授業が必修化となり、プログラミングに関する内容が充実します。
ただし、直近でプログラミング教育が必修化される小学校とは異なり、現時点で中学校の学習内容は詳しく決まっていません。もう少し時間が経てば、小学校のように文部科学省から「学習の手引き」が公開されると思われます。
高校のプログラミング教育必修化
高校のプログラミング教育必修化は、2022年度から学年進行で新学習指導要領を実施していきます。
高校では、情報科に新しく「情報Ⅰ」という共通必履修科目が設立されることがポイントです。
今までの学習指導要領は、情報科において「社会と情報」「情報の科学」の2科目からいずれか1科目を選択することが基本でした。しかし、プログラミングを学ぶ「情報の科学」を選ぶ学生は全体の2割しかおらず、約8割の生徒は高校でプログラミングを学ぶことなく卒業します。
一方、新学習指導要領で「情報Ⅰ」が必修化になると、すべての学生がプログラミングに触れる機会を得られます。さらに、情報セキュリティを含むネットワークやデータベースの知識を学ぶことができるため、学習した内容を実践的な仕事に活用しやすくなるでしょう。
また、選択科目である「情報Ⅱ」では、プログラミングについて応用的な知識を修得することができます。
ただし、中学校と同様に高校のプログラミング教育必修化も、現時点で詳しい内容は決まっていません。
プログラミング教育必修化に向けて覚えておきたいIT用語
プログラミング教育が必修化されることにより、コンピュータや情報にまつわる言葉の重要性はますます高まってくることでしょう。ここでは、プログラミング教育必修化に向けて覚えておきたい5つのIT用語を紹介していきます。
1.IT
ITとは、「情報技術」を指す言葉です。パソコンのハードウェア・ソフトウェアのほか、アプリケーション、インターネットなど情報技術にまつわる幅広い言葉の総称として用いられます。
2.ICT
ICTとは、「情報通信技術」を指す言葉です。ITとほとんど同じような意味を持ちますが、ICTのほうが「情報技術の活用方法、方法論」としての意味合いが強くなります。たとえば、教育現場では、「ITを活用した教育サービス(ICT)」としてさまざまなPC・タブレット用教材が開発されています。
3.IoT
IoT(Internet of Things)とは、私たちの身近にあるさまざまなモノをインターネットに接続して活用することです。たとえば、スマホで開錠管理ができるマンションの玄関ドア、自動で食材を管理し必要なモノを定期発注してくれる冷蔵庫などが挙げられます。現在はこのようなスマート家電としてIoTを活用することが一般的ですが、今後はさらにインターネットに繋がるモノが増えてくるでしょう。
4.edtech
edtechとは、教育(Education)と テクノロジー(Technology)を組み合わせたIT用語です。インターネットやITを活用した画期的な教育サービスを提供する企業、ブランド、ビジネスなどにedtechという言葉が利用されています。たとえば、インターネットから一流大学の授業を無料で受講できるサービスなどがあります。
5.STEAM教育
STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5つの単語を組み合わせたIT用語です。IT技術がさらに進歩した未来に活躍できる人材を育てるため、文部科学省は高等学校時代からSTEAM教育を導入する姿勢を見せています。
【まとめ】
今回は、プログラミング教育必修化の内容について、小学校~高校別に紹介してきました。
ポイントとしては、学校教育を通じてプログラミング的思考を学ぶことに意義があるという点です。小学校から物事を順序立てて考える力を養い、中学校と高校でより発展させて学んでいくことが主眼となります。
特に小学校は2020年から必修化と時期が迫っているため、できるだけ早めに文部科学省の資料(「小学校プログラミング教育の手引」など)を確認しておきましょう。